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――基本的な考え方 経営方針―― |
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不思議な感じの店である。 ここの店主と話し込んでいる客がなんとなく緊張しているように見える。決して初めてこの店に入ったのではなく、俗に言う常連に近い客のようなのだが…。しかも、店主も客も一定の距離をとったまま、互いに交わす言葉も一旦頭の中で反すうしてから口に出すような慎重さがある。 客が求めるのはこの緊張感そのものではなく、店主が客のために造るこの店独特の品である。 そう、客のために造る手の込んだ一品。それは他の誰のためのものでもなく、注文した客自身のために造られる。当然ながら、造り置きや他の客と全く同じ物は一切出さない。 軽薄な愛想言葉もなく、店主は客の好みを自ら要領よく聴き取り、客に出来上がりのイメージをイラストを交えながら正確に伝え理解を得た後、自らの想いと技とを加味しながら、客の目の前で一品を手際よくかつ丁寧に造ってゆく。客は店主のその仕事ぶりを口元をほころばせながら興味深く見つめ、完成を楽しんでいる。だが、決して店主をせかせたりはしない。また、店主も一旦動かし出した手を不要に止めようとはせず、ひたすらと一品を造ってゆく。 こんな雰囲気の店なのだが、他にも程よい緊張感と期待感とをあわせ持った表情の客で店内は程々の込み具合である。中には初めての客に付き添って来ている常連らしい客の姿も見える。また、店の外には人伝に聞いて来たものの、入ろうかどうか迷っている客らしい人が店の前を行ったり来たりしているのが見える。 だが、店主は横目で気づきながらも客引きよろしく声を掛けたりはしない。 この店の入り口には店の看板と 「ご注文は直接おうかがい致します。 店主」 と簡素に書かれた小さな張り紙があるだけで、写真や見本といった他の店ではごく当たり前のものは見当たらない。はじめて来る客は大変不安で戸惑うだろう。 注文した一品が出来上がったようで、注文客が手を叩きながら歓喜の声を上げている。店主は、一品を客に手渡す前に注文通りの出来であるかを確かめ、客に手渡しながらその一品について丁寧で的確な言葉で説明を始める。この時にこの店主が単なる無愛想で傲慢な人間でないのがよくわかる。どちらかと言えば、シャイで繊細な様に思える。しかし、緊張感は漂わせたままだ。他の客もこの様子を自分の事のように喜び、満ち足りた雰囲気につつまれているのがよくわかる。私も思わず手を叩き、たった今一品を手にした客にうらやましさを覚えた。 いよいよ次は私の番だ。山ほどある想いの全てをいかにうまく店主に伝えるか、緊張が走る。ふと店主の顔を見るとその表情は充実感で和み、その中に生き生きとした真剣な目が光って見える。「さあ 遠慮なく話そう! 店主はうまく受けとめてくれるにちがいない」 そんな気分になってきた。 |
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